翌朝僕と母とユノさんのご両親で警察に行った
なんだかんだと色々あったけど無事に届出は受理された
だからといって優先的に探してくれるわけもなく
動けないカラダで遠出する訳にもいかず、ただ時間だけが過ぎて行った
*****
ユノさんがいなくなってもう2週間
広すぎるベッドでひとり眠るのにも慣れてきた
「…ユノさん…」
事件や事故に巻き込まれたの?
それとも自分の意思で消えたの?
夜になり寝室で一人きりになると考えてしまう
どうして貴方は此処に居ないのかと
「早く戻ってきて…」
あの日から僕は立ち止まったままで
時間だけが過ぎ去ってゆく
そっと夜空を見上げれば幾億の星が輝いていて
僕はなんてちっぽけなんだろうかと思う
「ユノさん、貴方の居ない夜をどれだけ過ごしたら戻ってきてくれますか…」
結局何の進展も無いまま1ヶ月が過ぎた
不思議なもので出張先を出てからの足取りは全く追えず
本当に神隠しなんじゃないかって思ってしまったある日の事…
鳴り出したスマホに慌てて出ると警察からで
ユノさんと背格好の似ている遺体が見つかったとの事
僕は震える指でユノさんのご両親に連絡を入れると
とりあえず自分達が確認してくるから待っていて欲しいとの事だった
全身が心臓になったみたいにドクンドクンと鳴り響いて
上手く呼吸が出来なくて苦しい
指先だけじゃなくカラダが震えていた
母は僕の隣に座り、ぎゅっと手を握ってくれて
「チャンミン…」
「お母さん…」
連絡を待つ時間というものは何故にこんなにも長く永遠のように感じるのだろうかと思う
だけどもしその遺体がユノさんだったなら僕はどうなるの?
ねぇ、生きていけるの?
怖い、嫌だ、別人であって欲しい
そう何度も何度も願って祈って
僕はもうぐちゃぐちゃだった
「あ、」
鳴り出したスマホに手が出ない
怖い、でも、だけど、
「…もしもし…」
『人違いだったよ』
その一言で僕は涙が溢れた
良かった、ユノさんは生きてる
きっとまた会える、大丈夫
母は僕からスマホを取り上げ詳細を聞いてくれた
人がひとり亡くなったというのにほっとするなんて、不謹慎なのかもしれない
だけど、今の僕にはユノさんじゃなかったという事実が本当に嬉しくて
やっと、呼吸ができた気がする
僕のお腹に手をあてて
『大丈夫、パパは生きてる』
そう何度も何度も呟いて
「僕もしっかりしないと…」
*****
「大丈夫か?」
「…まぁ、うん…」
僕の親友であるキュヒョンが遊びに来てくれて
ふたりでゆっくりとお茶を飲む
母はキュヒョンにお茶を出すと、買い物に行ってくるからと気を遣ってくれた
毎日毎日進展は無くて
ただ、僕のおなかだけが大きくなっていく
「あれからもう何ヵ月なんだろうな…」
「チャンミン…」
ユノさんのこどもが欲しくなって、勝手に避妊もしないでこどもをつくって
そんな身勝手な僕の事を好きだって言ってくれたユノさんは消えてしまった
きっとバチが当たったんだ、ってずっと思ってる
本当に何を考えていたのだろうか
「何か事件に巻き込まれたとか…」
「もしもそうだとしたら、無事解決して帰って来た時にお前がそんな顔してたらユノさん自分を責めるんじゃないの?」
「…え、」
「帰って来た時にユノさんに心配させないようにしないと駄目だと俺は思うよ」
「…そう、だよね…」
この悪友は本当に僕をよく知っている
何処を突かれたら痛いとか、本当に、本当によく知っている
「今お前がやらなきゃいけないのは
元気な赤ちゃんを産む事だろ?
何よりも優先するべきなのはお前の体調だ」
「…ぅん…」
「ユノさんに元気な赤ちゃんを抱かせてやらないとな」
「…ぅん…」
そうだよね、僕のおなかの中には新しい命が宿っているんだ
例えユノさんがもう二度と戻って来なかったとしても僕にはこのこどもを育てるという最大のミッションがあるんだから
「いい加減現実を直視しないとな…」
「大丈夫、チャンミンならできるよ」
「…そう、かな…」
「愛する人のこどもを適当になんか育てないだろ?」
「あたりまえだよ!!」
「ふふ、ほら、きっと大丈夫」
「…うん、キュヒョナ、ありがとう…」
こうして僕は親としての自覚、覚悟を持てた
キュヒョンには本当に感謝してる
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