LoveBomb

触れるくちびる (後編)

2015/11/18 20:00 |触れるくちびる(完結)





フリーズしていた画面が
急に何事も無かったかのように動き出した


「時間が…無い?」

「…充電が…もう…」


チャンミンの言葉に慌てて確認すると
もう少ししかなくて

充電しようにもコードを差し込む場所が無いし
充電器だって持って無い


「なんでっ!?」


よく考えればわかった事

俺はこのタブレットを受け取っかてから
一度も充電をしていない


「チャンミン、どうすればいいんだよ!!」

「…僕には…どうする事もできません…」

「そんな…」


俺はチャンミンを手にして
あの老婆に出逢った場所へと急いだ

だけど

そこに老婆が居るわけもなく
ただ、立ち尽くした


「…チャンミン…」

「何ですか?」

「…俺と付き合ってよ…」

「まだ言いますか…」

「…好きなんだ…」

「…わかりました」


残された時間は少ない

だからこそ
俺はチャンミンと付き合いたいと思ったんだ


「ありがとう…」

「…ユノ、僕に残された時間は
正確には6時間です」

「それだけ!?」

「…はい」


たった6時間


「スリープ状態にしても変わらないのか!?」

「変わりません」

「そんな…」

「さぁ、ユノ
せっかく恋人同士になったんです
せめてデートくらいはしましょうか」

「…そうだな…」


最初で最後のデート
どんな場所がいいのかと聞いたら
ベタな初デートという返事で

街をブラブラして
それから映画を観て
ソウルタワーに来てみた


「ふふふ、盛り沢山なデートですね」


何だか嬉しそうなチャンミン


「ソウルタワーって所がベタな感じだろ?」

「そうですね(笑)」

「さてと、鍵を買いに行かないとな」

「え?」

「なんだよ、鍵を買わないとここに来た意味が無いだろ?」


ソウルタワーで
鍵をかけて永遠の愛を誓う

ベタ過ぎるけど
後悔だけはしたくないから


「ユノ、それは本当に好きな人としてください…」

「だからチャンミンとするんだろ?」

「…ユノ…」


カップルだらけのソウルタワーを
タブレット片手に一人で歩く

売店で鍵とマジックを買って


「相合い傘とか書いちゃう?」

「…あんた馬鹿ですか?」

「…ユンホ…と…チャンミン…」


鍵に相合い傘と名前を書いて
チャンミンに見せてみる


「…ユノ…」

「…さてと、つけようか」


驚く程につけられた鍵の数々
ここで沢山の恋人達が永遠の愛を誓ったように


俺は鍵をかけた


「ほら、できた♪」

「…ユノ…」

「…チャンミン…」


画面に映るのは
涙で濡れたチャンミンで

堪らなく愛おしい


チャンミンに残された時間は
多分あと数分


俺はチャンミンの唇に
そっと唇を重ねた


冷たいタブレットの感触


「…チャンミン…」


そっと離れると
チャンミンは嬉しそうに微笑んでいた


「チャンミン、愛してるよ…
もっと一緒に居たかった…」


そう囁くと
チャンミンの双眸から
はらはらと涙が零れ落ちて


「ユノ…僕も…」


その言葉を最後に
画面は真っ暗になった





それから暫く
俺はその場を動けずに居た


「…初めてのキスが、最後のキスだなんて…」


決して人前では泣かないと決めていたのに
真っ暗な画面に

ひとしずく零れ落ちた


「おやおや…」


振り返ればそこにはあの老婆が立っていて


「あんたっ…!!」


俺は駆け寄りどうにかチャンミン再び逢えないかと問いただしてみた

すると老婆は少し笑って言った


「あの男に心奪われたのか?」

「…そうだと言ったら…どうなんだよ」

「クックックッ…愚かな…」


不気味に笑う老婆に
俺は問い続ける


「どうすればチャンミンにもう一度逢えるんだ!?」

「…画面が消えたのならそれで終わりだよ」

「そんな、どうして!?」

「…あの男がどうなろうが
一度は捨てた命…
それをワタシが拾いあげただけなのさ」

「…え?…」


…一度は捨てた命?
それはどういう事なのだろうか?


「自ら命を捨てる事がどれ程の罪なのかお前さんにわかるか?
ワタシはあの男にその罪の重さを教えてやっただけなのさ…」

「そんな…チャンミン…」


彼が、自ら命を絶とうとしたなんて
何かの間違いじゃないのか?


「お前さんとあの男が出逢ったのが運命なのだとしたら
再び出逢えるだろう…」

「運命…」


消えるように人混みに紛れた老婆
俺は追いかける事も出来ずゆっくりと帰路についた




*****





あれから暫くして
友人が階段から落ちて骨折した為病院に行った

すると看護師さん達が慌ただしく動いていて
どうやら何かあったらしい


「何かあったのかな?」

「206号室の人がさ、今朝、数ヶ月ぶりに意識を取り戻したらしいんだよ」

「へぇ…」

「しかも、相当イケメンらしくて
看護師さん達が大喜びだよ」

「あーはーはー!!
イケメンは得だなぁ(笑)」

「何て名前だったかな…
確か俺達より若くて…
…シム…シム…シム・チャンミン?」

「え?」


忘れもしないその名前
俺は胸の高鳴りを抑え
その病室へと急いだ


「…シム・チャンミン…」


病室のドアをノックすると
返事が聞こえドアを開ける


「…失礼します…」


ゆっくりと歩を進め
ベッドに横たわるその人を見つめる


「…ユノ…?」

「…チャンミン…」


再び出逢えた幸運に胸が震え
どんな言葉を掛ければいいのかわからず
ただ、みつめ合って…

チャンミンの瞳から涙が零れる
彼は相変わらず綺麗だけれど
タブレットの時よりもっと綺麗で

そっと指先で拭い彼の頬に触れた


…あたたかい…


冷たいタブレットなんかじゃなく
人として生きている


「…チャンミン…愛してる…」

「ユノ…僕も…愛してる…」


そう囁いた唇に唇を重ねると
柔らかくて、あたたかくて、
唇から幸せが流れ込んで来るようだ


「初めての…キス…」


嬉しそうに微笑むから


「…始まりの…キス…だろ?」








-END-




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