…side C…
僕は1年前交通事故にあった…
車を運転中、交差点で信号無視の車に衝突されたらしい
ベッドの上で気付いた時は
数年間の記憶を失っていて
何故か涙が止まらなかったんだ
もしかしたら大切な何かを忘れてしまったのでは無いかと必死に思い出そうとしたけれど
何も思い出す事は無かった
そんな時に出逢ったジヘ
彼女の笑顔に僕は胸を締め付けられるような感情を覚え
彼女と出逢ったのは運命だったのでは無いかと思う程急激に恋に堕ちた
幸せな日々に僕達は
幸せな未来を夢見て
彼女の家族に紹介されたんだ
優しそうな両親と
彼女によく似たお兄さん
彼女から重度のシスコンだから気にするなと言われていたけれど
僕を見て困ったような顔をしたのを見たら
きっと寂しいとかそういう気分なのかと思い申し訳ない気分になる
彼女はそういうお兄さんの行動が納得出来ないらしく
部屋に戻ると言ったお兄さんの腕を掴んだ
自分の護るべき娘を
彼氏に奪われた父親の心境と同じなんじゃないかと思うから
彼女の行動に待ったをかけようとした
掴まれた腕はそのままに
彼は僕を見つめて
「…誰よりも幸せになって…」
「…ぇ…?」
本当にお兄さんは彼女の事を愛してるんだろうと思う
だから僕は彼女の事を沢山愛して
彼女を託して良かったと安心して貰えるように頑張らなければならない
逃げるように部屋に戻ってしまったお兄さん
ふと脳裏に過るのは
何故か散る桜…
「…桜…?」
思い出そうとしても思い出せず
痛む僕のあたま
何かを思い出せそうな
いや、思い出さなければいけないような
そんな気がして堪らないのに
「どうしたのチャンミン…」
「ごめん、ちょっと頭が痛くて…」
「大丈夫?うちのオッパのせいじゃない?」
「お兄さん?何で?」
「だってチャンミンに対して素っ気ないっていうか…」
「ふふ、ジヘ、そこは寂しいんだって理解してあげないと可哀想よ?」
そう言って笑うお母さんに
不満そうに唇を尖らせる彼女
ふふ、可愛らしいなぁ
その日を境に
僕は不思議な夢を見るようになった
桜並木を誰かを探し求め走って、走って…
だけど何処にもいない
桜の下ではらはらと散りゆく花弁を眺めては
せつなくなる胸に手をあてる…
「何処にいるの…」
*****
「日本?」
「そっ…オッパ転勤になっちゃって…」
お兄さんが転勤になった
そう聞いて僕の心臓は大きく跳ねる
どうしてこんなに動揺してるんだろう?
「…チャンミン、泣いてるの…?」
「え?僕?」
彼が、遠くに行ってしまう
それが寂しい?
悲しい?
どうして?
「今度食事会するから
その時は一緒に来てくれる?」
…勿論!!
そう即答しようとした自分に戸惑う
何故、どうして僕は…?
例えば僕とお兄さんが知り合いだったとしたら
きっと僕にそう言ってくれるハズだから
この感情は何なんだろう?
「チャンミン?」
「えっ?あ、うん、勿論参加させてよ」
*****
ジヘと逢った夜に例の不思議な夢を見ていたのに
何故か毎日のように見るようになった
この夢は僕の記憶なのだろうか?
僕の忘れてしまった記憶が見せる夢?
考えても記憶が戻りはしなくて
だけど苦しい想いだけが募ってく
僕は誰を探してるの?
どうして探してるの?
どれだけ考えたって答えなんか無くて
不思議な感覚のまま僕は彼女と二人で食事会に向かった
家族との食事会
それは本当に楽しくて
明日居なくなってしまうのが嘘のようだ
そういえば僕は
お兄さんとちゃんと話した事が無い
僕と同じ位の身長に小さな顔
彼女とよく似ていてかなりのイケメン
よく笑っているようだけど
僕は今日初めて見た気がする
暫くしてお開きとなり
店を出ると
目の前を歩くジヘが階段で足を滑らせた
咄嗟に伸ばして腕を掴み抱き寄せたのに
一緒に落ちてしまった
「チャンミン!!」
何が起こったのか?
僕はどうしてしまったのか?
目を閉じた僕の脳裏に浮かぶ夜桜と
幸せそうに微笑むのは…
「痛っ…」
どうやら少しぶつけたようで
あちこちか痛い
「…チャンミン、大丈夫か?」
「えっ?ぁ…」
僕が探していたのは
僕が求めていたのは
そうか、彼だったのか
「どうした?
何処かぶつけたのか?」
「……いたかった…」
逢いたかった
貴方に逢いたかったんだ
思わず腕を伸ばして彼を抱きしめたのに
一瞬にして全てを理解してしまった
彼はジヘの兄として存在する事を選んだのだと
「チャンミン大丈夫だった!?」
彼女の声に慌てて離れ
怪我は無かったかと問う
それならは僕はどうするべきか
必然と選ぶべき未来が見えてしまったんだ
翌日空港に見送りに行った僕とジヘ
寂しそうなご両親と彼女
僕は少し離れた所からずっと彼を眺める
あの唇が僕に触れた時
僕はこの上無く幸せを感じたんだ
今度こそ忘れないように
この胸に焼き付けるように
余すところ無くみつめた
…行かないで
油断したら言ってしまいそうな程苦しくて
泣きそうになる自分に
忘れてしまった僕が悪いのだと呟き
必死に堪える
笑顔で手を振る貴方に駆け寄って
どうか行かないでと縋りついたなら
また、あのキスをくれましたか?
いや、貴方はきっと家族思いで妹思いな人だから
微笑んでサヨナラと言って行ってしまったでしょうね
あぁ、貴方を愛していました
あの桜の下でしたくちづけは
今でも夢のようです
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